単語の自主トレの進め方 その④
郡山校&宇都宮校の生徒の皆様、こんにちは!
英語科の大澤 秋津(ランニングシューズはミズノ派)です。
その③で終わるつもりでしたが「しまった!飴色玉ねぎ&カレーの画像の重要な伏線回収に気を取られて、その①で仕込んだやつがまだ未回収!」という事態に気づき、その④を執筆する運びとなりました。未回収の伏線とは‟覚えるのは自分じゃない!脳!”というキーワードです。忘れてしまうとは、まさにNo!ですよね。
我々が単語などを覚えようとする際、脳は自動的にそれらの入力された情報を短期記憶の領域に送り込んでしまいます。そして短期記憶は最速数十秒前後しか情報を保持できません。これはTVの録画用ハードディスクがいっぱいになることを避けるために他の家族が勝手に録画番組を消去しちゃうのと同じ作用です。TVには外付けのハードディスクがありますが、人間の脳はすべての体験を記憶はできませんし、拡張する方法もありません。
一方、ほぼ一生忘れないような記憶を司る長期記憶に入り易い情報というものも存在します。簡単に言えば‟生死にかかわるような体験”。我々には(一応)種の保存という本能があるので、死にかけたような経験を万が一にも忘れてしまえば、次に同じようなケースに遭遇した場合、命を失う可能性があるからです。
毎年、この記憶の基本的なメカニズムについては前期授業のどこかで説明するのですが、必ず数名「じゃあ先生、吊り橋みたいな危ない場所で単語を勉強すれば一気に長期記憶で定着ですよね」みたいなことを仰る生徒がいます。それは違います。念のため。
どちらの記憶領域に保持するかは脳やら本能やら無意識の判断によるところが大きいため、我々にはどうしようもないのですが、たった一つ介入方法があります。それは反復によって脳を錯覚させることです。短期記憶に入力後忘却されても、再度それを入力する。これを一定回数続けていくと、短期記憶が「……ちょっと待てよ!これだけ短いスパンで何度も入力されてるってことは、これは忘れちゃいけない重要な情報なんじゃないのか?」と思い込み「おやぶーん!長期記憶のおやぶーん!こいつぁ、あっしなんかのとこで扱っていいシロモノなんかじゃありゃせん。どうか一つ、親分のとこでよろしくおねげぇします」と、入力された情報が長期記憶に移行するのです。これが記憶のメカニズムです。そして僕がこれまでに出会ってきた、所謂‟頭がいい人間”とか‟記憶力がいい人間”は、これまでの学習経験を通して「自分はこの内容を何回くらいの反復で覚えることができるのか」という暗黙の一定回数を正確に把握した上で、それ以上はやらない代わりに、絶対にそれ以下で妥協や中断をしないタイプでした。
僕は哲学科を出た後に別な大学で聴講生として基礎心理学の講座でこの話を聞いた時、衝撃を受けました。それまで必死になんとかこの目の前の単語を覚えようとしていた自分はなんだったのかと。結局、我々ができることは覚えること自体ではなく、短期記憶から長期記憶に情報を移行させるために上手に反復を行うことなのです。
まとめるとこうなります。
- どのみち1~2回前後やったくらいでは忘れるのは当然。要は脳が錯覚し始める回数までさっさと入力と忘却のプロセスを消化してしまうこと。
- 覚えにくいものには特に徹底して反復をかけていく。一日に何度も小分けにしてチェックし、忘れたらその度に入力し直す。
- 基本、脳は楽をしようとするので「もぅ覚えられないよぉ。頭がパンクしそう」なレベルよりも常に少しだけ強めに負荷をかけた方が効果的。