水泳とおにぎり
後期の準備やテキスト作成に明け暮れていた先月末。クーラーの効いた部屋での仕事とはいえノイローゼ気味になってきた猛暑日の午後、一段落着けてから「もぅやってらんね~よ!」という心の叫びの命じるまま、速攻で泳ぎに行きました(流石に水着を下に着てから外出するという小学生みたいなまねはしませんでしたが、気持ちは限りなくそれに近いものがあったことは認めます)。
7月上旬にゆる~く12kmを走って以降、一旦‟市民ランナー”の称号は桐の箱に入れて神棚に上げたが最後、その存在を忘れてしまったかの如くずっと走っていませんでした。その代わり時々泳いでいたおかげで水をとらえる感覚はずいぶん取り戻せたような気がします。
同じ保育園だった幼馴染と一緒に(確か)小1から始めた水泳ですが、最初はとにかく水に対する恐怖しかありませんでした(水温が低かったり、足が着かないプールでは未だにちゃんと泳げません)。
結局、小3で止めてしまったためバタフライは未習得。……僕の中にはそれ以来、バタフライに対する強い憧れがありました。「この世には二種類の人間しかいない。バタフライが泳げる人間とそうでないやつだ」みたいな、コンプレックスのような憧憬。
父が他界した2014年の夏、いろいろ思うところがあり突如数世紀振りに水泳を再開したのですが、隣のレーンで選手コースの小中学生がかっこよくバタフライを泳いでいる姿にショーケースのトランペットを眺める少年の如く見とれていました。
まぁ、普通の大人であればそれまでの話かもしれません。でも、僕としては‟バタフライが泳げないままの人間”で一生を終えることがどうしても受け入れられず、ほぼ独学で翌年どうにかそれらしく泳げるようにはなりました。
猛暑日のプールは水の中にいるだけで天国ですが、比較的最近できるようになったバタフライが少しずついい感じになってきているのがただただ楽しく、夢中で泳いでいました。
この日、僕は相当どうかしていたらしく泳ぐという行為自体の楽しさのあまり体力を一切セーブできなかったようで、プールから上がってから暫くは『あしたのジョー』の最終話の矢吹丈の如くベンチでぐったりしていました。そして体力が戻ると今度は猛烈な空腹感が。
本能のままに動いているような行動履歴ですが、僕には一つだけ事前の計画がありました。題して‟死ぬほど泳いでから『一路』でお金に糸目をつけずにおむずびを食べる作戦”!
という訳で、開成山のプールからすぐのおむずび専門店『一路』へ。
【おむすび一路】素材にこだわった握りたてを提供する美味しいおむすびを堪能! | おにぎりマイスター
郡山でおにぎりと言えば『たけや』が有名ですが、その『たけや』とはまた違った方向性の『一路』...…どっちも大好きです!
何回かテイクアウトをしたことはありましたが、お店の中で豊富なサイドメニューを含めて直接食べるのは初めて。そして今回の軍事作戦(?)には資金の上限が設定されていない関係上、とにかく食べたいと思ったものを片っ端からお願いして……
空腹の五臓六腑に染み渡るしじみ汁。揚げたてのえび天むす&から揚げが奏でるカラっとした衣とジューシーな中身のハーモニー。箸を置く暇すら与えない青唐辛子肉みそのおむすびともろきゅう&卵焼きの無限ループ。……今後もプールと『一路』はセットで行動計画を立てようと固く心に誓った日となりました。
実は今回の作戦の原案(?)となったのは、小1のプールの帰りに食べたわかめご飯のおにぎりでした。おっかないコーチと足のつかないプールへの恐怖心との戦いに疲れ果てていた時、送迎してくださった幼馴染のお母さんが信号待ちの際に後部座席の僕たちに手渡してくれたラップに包まれたおにぎり。学校給食のわかめご飯はそこまで好きという訳ではなかったのに、このおにぎりは別格でした。噛み締める度にわかめの塩味がお米の甘さと溶け合っていき、一口毎に繰り返されるその完璧な調和までの化学反応。
記憶の美化の分を最大限に差し引いたとしても、あの時よりも美味しいわかめご飯のおにぎりにはその後出会っていません。……ちなみにちょっと期待していたのですが『一路』のメニューにはわかめご飯のおむすびはありませんでした。仮にあったらor将来登場したどうしよう?最高の記憶はそのままに留めておくべきか、それとも......。