大澤 秋津 official blog

或る市民ランナーの内省録

宇都宮放浪記

 宇都宮校から徒歩約10分のところに母方のお墓があるので、先週、冬期講習の合間を縫ってこの一年の御報告を御先祖様にしてまいりました。

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お寺の入り口の掲示

 母親の家系は代々教師一族で、僕はその系譜の四代目。そんな御先祖様の御膝元で家業たる授業をするのは、いつも「下手な授業をやったらばちが当たる」というプレッシャーと同時に「見ててくれ、御先祖様!俺はやるぜ!」という大きなモチベーションになっています。

 墓前で手を合わせる前にふと思ったのは、「日清・日露戦争スペイン風邪関東大震災、二度の大戦……こういった状況の中を御先祖様たちは生き抜いてきた」ということ、そして「だから自分たちもここを切り抜けられるし、また、そうあるべき」という、完全に忘れていた素朴なことでした。

 

 ここからさらに約5分歩くと二荒山神社です。

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参拝後、鳥居越しに見えたParcoの看板も今は昔

 先程の墓前と同様に「受験生がその努力を発揮する場を、どうか最後までお守りください」とお願いしてまいりました。いろいろな考え方があると思いますが、少なくとも僕は生徒を直接教え、送り出す立場にある以上、神頼みは人事を尽くした後と考えています。講習や授業を全て終えていない段階で合格祈願をしたならば、御先祖様たちは「まだおまえにはやるべきことがあるだろうが!家業と己の本分をまず全うしろ!と怒ると思います(※うちはそういう家系)。

 ただ、このコロナ禍、流石に一個人の力でどうなるものでもないので、そこはもう神頼みしかありません。この約2年、悪天候や台風、コロナでことごとくフルマラソンに挑戦する機会を失っている僕としては、これまで重ねてきた時間と努力を全力でぶつけることができる場を不条理に、一方的に奪われることだけは受験生にあってはならないと切に思うのです。

 

 お参りを終え、お昼ご飯を食べようと歩いていると……

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なんだかこの周辺だけ水墨画のような雰囲気

 確か夏にはなかったような、大谷石のオブジェを発見!偶然だと思いますが、後ろの建物の壁の風合いとも見事な調和

 

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芋豚の柔らかさと滋味が感動を呼ぶ絶品ポークソテー

 後ろのテーブルではママ友さんグループによる大絶賛上映中のアニメ映画についての議論が熱く繰り広げられており、「ヒットは100万部までは作品の力。そこから先は社会現象」というネットの記事で読んだ、どなたかのコメントを思い出しました。

 同時に、村上春樹氏の「不条理な現実に対抗するためには、我々には物語が必要」という言葉も思い出しました。おそらく社会学関係者の方がすでに分析されていると思いますが、本を普段読まれない人たちの、このコロナ禍に遭ってのニーズにあの作品が合致し、社会現象に至ったのではないかと思います。

 ……そこから次の様な仮説も展開できるのでは。「より強大な不条理を前に、脆弱な物語は対抗できない」。非常事態宣言中にカミュ『ペスト』を読んだことは大きな財産となりました。なので、これからも定期的に‟古典”と呼ばれる作品を読んでいこう、その必要性を痛感しました。

 

 翌日のお昼は路地裏の小さな喫茶店で。

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‟どんな焼き方をしたらこんなふかふかになるんだろう”トースト

 以前、このお店の御主人にペーパー・ドリップでの美味しいコーヒーの淹れ方を御指南していただき、以来その技術を少しでも再現しようと最近はキッチンタイマーまで使い、自信もちょっとついてきたのですが、やはり素人はプロにはかないません

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ミルク、シロップとの三位一体を奏でるコーヒーゼリー

 このお店は置いてある本のラインナップも洗練されています。以前、NYから帰国する際の空のお供にと妹が持たせてくれた森見登美彦ペンギン・ハイウェイ。お店の書棚にはその隣に夜は短し歩けよ乙女があり、母親が薦めていたことを思い出して冒頭数ページを読んで……帰りに立ち寄った本屋さんで文庫本を買いました。冬期講習が終わったら読もう。その後は……‟古典”だ。