bulk : fact
今回の表題は日本ファルコムの往年の名作ゲーム『Ys (イース)』のラスボス、ダルク=ファクトをもじったものですが、記事内容には全く関係がないことを、はじめにお断りさせていただきます。
最強装備ではなく2番目に強い装備品でなければダメージを与えられないという世界観と密接に関連した設定と伏線回収は見事でした……が、事実上攻撃回避が不可能なので消耗戦&短期決戦を強いられるだけでなく、こちらの攻撃がヒットするごとに移動できる床面積が削られるという無理難題の最終決戦!
投げ出しそうになりながらもリトライを繰り返し、クリアした時には無意識に呼吸を止めていたことに気づきました。
……中学時代の思い出はさておき本題。
先日部屋を片付けていたところ、混沌の地層とも言うべき本棚の奥に大量の某国営放送のラジオ講座テキストを発見。予想を超えるあまりの埋蔵量に熟考の末、処分することに。
テキストをまとめながら、ふと大学時代の恩師の言葉を思い出しました。
大澤、いい勉強は必ず形になって残る。形になって残る勉強をしろ。
その哲学科卒業後、聴講生として参加させていただいた某大学の臨床心理の教授が暑中見舞いの返信に記してくださったのは、『汝の血肉となったものを信じよ』という主旨の(確か)ニーチェの言葉でした。
また、大学1年生の時に読んだショーペンハウアーの『読書について』の中の印象に残った一節は、
本を読んでも、自分の血となり肉となることができるのは、反芻(はんすう)し、じっくり考えたことだけだ。ひっきりなしに次々と本を読み、後から考えずにいると、せっかく読んだものもしっかり根を下ろさず、ほとんどが失われてしまう。
というものでした。
そして時は巡り2015年、特設サイトに寄せられた37465通の質問&相談メールに約3ヵ月に渡って目を通し、計3765通にも及ぶ回答を続けた村上春樹氏は、
でも大変だったけど、楽しかったですよ。この仕事をしていてつくづく実感したのは、世の中にはバルク(嵩)が大事な意味を持つものごとがあるんだな、ということでした。
と述べています。
シリーズと年代順にテキストを一つひとつ積み上げながら、これらの断片的な言葉が全て、ある一つの方向を指していることを実感しました。
全ての番組をコンスタントに継続できた訳ではなく、後から見直したテキストは皆無に等しいものの、これら全てが今の自分の血肉となっている、と。
同時に気づいたこともいくつか。これらのテキストを最終的に処分しても、なお自らの血肉とするためには、反復と同等に瞬間の強度が重要だったということ。無条件にただ嵩を増やすだけでは量質転化は永遠に起こらないという事実。
大量のテキストを指定された時間に指定された場所へ積み上げ、その嵩を前に「今後、より血肉とするために、より身を入れて学ぼう」と誓い、その場を後にしました。