大澤 秋津 official blog

或る市民ランナーの内省録

福島ファイヤーボンズ 2020-2021シーズンの振り返り その②

はじめに

 

 前回述べたように、昨シーズンのボンズは上位チームのような大型補強が叶わないまま開幕を迎え、抜本的な打開策が見いだせないまま、主力選手の負傷などでさらに選択肢が狭まっていくという状態で戦い続けなければなりませんでした。

 来るべき新シーズンはかつてないレベルでの補強を行い新戦力7名を加えての対照的なスタートとなります。なので、これから考察していく昨シーズンの問題点が、これからどのように修正&改善されていくのかを、新シーズンの見どころの一つとしてとらえていただければ幸いです

 以下は飽くまでも1ブースターとしての個人的見解ですが、昨シーズンの問題点を考える上で重要なのは十分な補強が出来なかった以上、采配や起用法云々よりも、負けが込み始まったシーズン中盤からのチーム・オフェンスの停滞を最後まで修正しきれなかったことだったと思います。

 確かに、バスケットボールの金言に‟オフェンスはディフェンスから”というものがありますが、ボンズのディフェンスは決して悪くありません。特にバックコート陣のDへの積極的な姿勢は試合終盤でも緩むことのないフットワークに見て取れました。また、チーム全体を通してスイッチへの対応やカバーディフェンスへの取り組み、ディナイ及びローテーションへの意識も徹底していると感じました。相手にイージーバスケットを許すというよりも、第2Qもしくは第3Q以降点が取れなくなって失速し、引き離されていくという負け方が多かったという印象です。

 よって、今回はオフェンスの停滞という点に絞って感じたことを振り返ろうと思いますが、まさにこの点をピンポイントで修正していくことを狙ったような新シーズンの補強に、今から開幕が楽しみです。

 

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終戦直後。茨城ロボッツ様、‟幻の延長戦”はB1でやりましょう!

 

 

3ポイントへの依存

 

 昨シーズンのボンズのオフェンスの生命線は3Pだったと思います。(詳細なスタッツ分析をした訳でないのですが)ゲームを通してチーム全体で3割後半をキープできた試合は、強豪相手でも接戦に持ち込めたという印象が強く残っています。

 3Pが決まっている時のボンズには手がつけられない強さがあり、またそういう試合は会場の盛り上がり方も最高でした。今振り返ると、‟3Pが入る時は勝つ、入らなくなってくると負ける”という分かりやすい構図にシーズンの比較的早い段階から陥っていたのでは、と思います。

 また、シーズン中盤辺りからは味方がペイントエリア周辺にいないorスクリーンアウトに入る前に3Pを放ち、結果リバウンドが取れずにセカンドチャンスを失うというオフェンスのリズムが単純化するケースが増えていきました。

 相手チームからすると、ペイントエリアを固めつつ3Pへのプレッシャーを怠らなければ、後は‟偶発的に入る3Pと個人技にある程度やられても問題ない対戦相手”になっていたのかもしれません。

 

 3P以外のオフェンスの選択肢について考えると、昨シーズンのボンズはラン&ガンのスタイルはあまりとらず、また、速攻でのミスが多かったという印象です。ワンマン速攻やアウトナンバーでの速攻からのパス・ミスやシュート・ミスで、追い上げるチャンスを自ら失していたシーンも少なくありませんでした。

 新シーズンに向けての補強では、ビッグマンを含めてチーム全体の走力の底上げが意図されているようです。ティールからの速攻で相手チームに確実なダメージを与えるような展開が増えることを期待しています!

 

 

ハーフコート・オフェンスの停滞

 

 (これは昨シーズンに限った話でなないのですが)ボンズボール運びの段階でプレッシャーをかけられると、そこからオフェンスのリズムを崩す傾向が強いチームでした。

 フルコートもしくはコート3/4周辺からプレッシャーがかかってもボールを失わずに着実に運べる村上選手がコートにいない場合、‟単独突破”はおろか外国人選手のスクリーンを使ってもセンター・ラインを越えるまでに一苦労。結果、オフェンスの時間が削られるばかりでなく、相手にしっかりと構えるだけの時間も与えてしまい、今度は3Pラインの手前でパスの出しどころを探すためにボールを止める時間が増え、タフショットを強いられたり、シュートでオフェンスを終えることが出来ずにリズムが更に狂っていくという悪循環。

 シュート、ドリブル、パスの3拍子が揃った村上選手がその広いコートヴィジョンから適切なオプションを選択し、神原選手がパスの中継点としてオフェンスを活性化させていた序盤はスタンダードなハーフコート・オフェンスが最も機能していた時期だったと思います。......今更ですが、村上選手の故障と神原選手の離脱がなければもう少し違ったシーズンになっていたのでは、と。加えて、単なるゲームのペースコントロールだけでなくパスやドリブルなどで自分が起点になることでゲームを動かすこともできる、タイプの異なるガードが何名かラインナップにいれば、とも思いました。

 他に気になった点は、オフ・ボール時の選手のカットインなどの動きが特にウィークサイドで弱かったこと。また、ボールを持たない選手をフリーにするためのスクリーンも(戦術上の選択かもしれませんが)あまり活用されなかったことです。

 新シーズンでは外国人選手のポストプレイに加え、ドライブインやカットインなどのペイントエリアを攻めるプレイや、ピック&ロールなどオフェンスの選択肢が広がることも期待しています。

 

 

パスの速度と精度

 

 他のB1・B2の試合を見てみるとすぐに気づくことですが、ボンズあまりパスでボールを回さないチームでした。チーム及び個人の双方でもアシストはそれ程多い方ではありません

 アシストの低さ以上に気になったのは、パスの速度精度。試合前のアップのような放物線を描く緩めのパスが試合でも多用され、直線的な早いショートパスやバウンドパスなど低い軌道のパスはそれほど見られませんでした

 また、パス・カットやスティール以上に(速攻も含め)味方同士の呼吸が合わずにパス・ミスからのターン・オーバーの少なくありませんでした。

 ゲーム中、コート上の5人全員でパスを捌きながら相手ディフェンスを切り崩すシーンや、黄金期のスパーズ(特に2013ー2014)のようなエクストラ・パスを供給する場面もたまに見られたので、来期はその機会がもっと増えることを期待しています。

 ガード陣も大幅に刷新される新シーズンは、チーム・オフェンスのケミストリー構築に時間を要することが想定されますが、むしろそこはチームの長期的な成長として楽しみにしています。