大澤 秋津 official blog

或る市民ランナーの内省録

福島ファイヤーボンズ 2020-2021シーズンの振り返り その③

はじめに

 

 今回は昨シーズンの各選手についてまとめていこうと思います。1シーズンを通してずっと応援してきた選手たちですので、チームを去られた方々のことを振り返るのは今でも辛いものがあります。個人的&感傷的な6000字を超える長文となってしまったことをまずはお断りさせていただきます。

 結果が出ないとすぐに指導者や選手を換えるNBAに代表されるような海外のプロ・スポーツチームの在り方は、時に短絡的なためあまり賛同はできません。ただ、補強のままならなかった昨シーズンのボンズのラインナップにある種の限界が感じられた以上、‟人を換える”という選択肢がバスケという競技の特性上時に有効であることは理解しています。

 チームの‟心臓部”だった村上選手&神原選手の故障が昨シーズンのチームの機能不全の一因だったことを考えると、特にガード陣の大幅な刷新は理にかなった補強であることは頭ではわかっているのですが.....開幕当初のメンバーで勝ち上がっていく過程を見たいと気持ちがブースタークラブ入会の大きな動機だっただけに今でもどこかに割り切れない気持ちが残っています。

 

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終戦、フェイゾン選手は......41得点,、14リバウンド、 5アシスト!

 

 

#0 エリック・マーフィー 選手( PF/C :208cm 109kg )

 

 昨シーズン開幕時の(実質的)唯一の新戦力にして、(個人的)シーズン前半のMVP。チーム待望の外国人長距離砲の彼が加わったことで、オフェンスに幅がもたらされました。潤沢な補強ができなかった昨シーズンですが、それでも開幕前に一点集中で‟最善策”といえる選手をピンポイントで発掘してくるチームのマネジメントにも感服です。

 3Pが武器のアウトサイドで戦うシーンが注目されがちな選手ですが、体格に勝る外国人選手に対しインサイドでのフィジカル・コンタクトも辞さずにマッチアップしリバウンドに最後まで絡もうとする姿勢も忘れてはいけません!

 惜しむべきは......ケガと代表戦以降、機動力に陰りが見られたこと。そして、インサイドでの(時に不可解な)ジャッジに対してフラストレーションを募らせていたこと(確かにB2のジャッジのレベルについては僕も思うところは山ほどあるのですが)。

 副キャプテンを務める新シーズンは、どのように弟さんを含めた新加入の外国人選手たちをまとめていくのか、そのキャプテンシーにも注目です。試合前のアップでダーク・ノヴィツキ―選手の‟片足フェイダウェイ3P”を試されていたのも気になるところ。このオフで習得されていたとすれば…...さらに強力な武器が加わることに!

 

 

#1 シャヒード・デイビス 選手( SF:206cm 95kg )

 

 彼がノッてくるとチームも活気づいてくる、そんなタイプの選手なのでスコアラーとして覚醒し、ボンズに更なる勢いを与えてくれること期待していました。

 昨シーズンはずっとシューティング・タッチの修正に苦労されていたみたいです。コート上で時々歯車が嚙み合わないシーンも見られ、良い時とそうでない時のムラが解消されないままの移籍となってしまったことが残念です。

 

 

#5 友利 健哉 選手( PG:177cm 75kg )

 

 出場時間が少なかったシーズン前半は他のチームメイトと呼吸が合わなかったり、重要な場面でのミスも時々あったのですが......シーズン後半は間違いなく‟影のMVP”と言える存在でした!

 派手なプレイはないものの、特に村上選手の不在時、ゲーム・コントロールに苦労するチームに安定感をもたらし支え続けたのが彼です。友利選手がコート上にいることでチームはギリギリのところで踏みとどまれた、というゲームがシーズン終盤にはけっこうあったのでは、と思います。

 NBAでも強豪チームには必ず一人いる‟ベテラン&ロッカールームの指揮官”のような役割を、新シーズンもその経験値と併せてを発揮してください!

 

 

#8 村上 慎也 選手( PG:172cm 61kg )

 

 B2トップクラスのスピード&ボールハンドリングに加え、高いバスケIQを誇るボンズ生え抜きの司令官。以前に撮影されたチーム内の野球大会(?)の様子からもうかがえるのですが、先天的な運動神経とセンスには特筆すべきものがあります。

 (選手層を考慮しての戦略だと思われますが)シーズン前半は主に6thマン的な‟切り札”としてオフェンスの停滞時やボール運びに苦戦するシーンで登場しドリブルから事態を打開するシーンが印象的でした。

 バスケにおけるPGの役割の大きさを再認識&痛感させられる選手です。彼がコート上にいる時が一番チームに安定感があっただけに、シーズンを通してその活躍が見られなかったことは残念ですが、一番悔しいのは間違いなく御本人だと思います。

 最終戦を見る限りにおいては、あのスピードが戻ってきている様子がうかがえ安心しました。ガード陣が刷新された新シーズンにあっても、ボンズの基軸であり続けて欲しいと思います。

 

 

#9 神原 裕司 選手( PG/SG:182cm 76kg )

 

 数字にならない部分でのチームへの貢献が非常に大きな選手でした。絶妙なパス中継でオフェンス・リズムを活性化する一方で隙があれば確実に得点し、ディフェンスではスティールだけでなく相手のパス・コースを意識したポジション取りやスイッチへの対応など的確な状況判断でも高いバスケIQを発揮されていました。

 印象に残るのは、オフェンス時にハイ・ポストに位置してからのアウトサイドの選手と数回パス交換をするシーンです。そのままポスト・プレイに移行するのか、それともそこからキック・アウトのパスを出すのか、インサイドへのバックドア・パスもあるので相手チームにとっては守りにくいパターンだったのでは。

 また、ディフェンスではマンツーマンとチームディフェンスを高度な次元で両立していると思いました。スティールが注目されがちですが、そこまでの過程ももっと評価されるべきです。彼はギャンブル性の高い一発スティールは決して狙わず、むしろティールが起こるようなシチュエーションを自ら構築していたのだ、と離脱後に気づきました。

 …...シーズン前半の影のMVPともいえる彼の離脱後、チームのスティール数が減ったばかりでなくディフェンスの強度と質も低下したような気がします。新シーズン、復活に不安もあると思うのですが、多少時間がかかってでも是非プレイオフまでには復調されることを願っています。レイオフの勝負所でコート上にいなくてはならない存在だと思っています。

 

 

#10 菊地 広明 選手( SG:184cm 79kg )

 

 ボンズ‟全員バスケ”を体現されていた選手です。限られたケースでの途中出場であってもダッシュでコートに入り足を動かして相手に張り付く積極的なデイフェンスの姿勢をいつも見せていただきました。ナイス・ディフェンスとの紙一重の判定から連続でファールをとられることが多かったのが残念です。

 オフコート・キャプテンとして、チームが連敗中でも苦しい表情をブースターに見せなかったプロフェッショナリズムには敬服しかありません。

 蛇足で申し訳ないのですが、珈琲好きの僕としては、もう一度‟きくりんブレンドが飲みたいところです。

 

 

#11 山内 翼 選手( SG:185cm 85kg )

 

 出場機会が少なかった前半戦でも、思い切りのよいドライブで相手ディフェンスに風穴をぶち開けるシーンが見ていてわくわくしました。連続してファールをとられるシーンもあったのですが、これは今後経験値を重ねることで改善されていくと思います。

 神原選手離脱直後に出場を志願したという積極性を、新シーズンでも発揮してチーム内に建設的な競争をもたらす存在になって欲しいと願っています。

 このオフでドライブ系の攻撃にどんなバリエーションが加わったのか、そして3Pの精度の向上は...…オフェンスでの貢献度アップにも期待しています。

 

 

#15 チリジ・ネパウェ 選手( C:208cm 122kg )

 

 B2はおろかおそらくB1でもNo.1クラスのゴール下の守護神。彼がコート上にいる時間帯のディフェンスは他のメンバーだけでなく、応援しているブースターにまで絶対的安心感をもたらしていました。彼がパワー勝負で後れをとったというシーンは記憶にありません

 昨シーズンは、村上選手のスピードのアドバンテージ、チリ選手の圧倒的パワー、そして敵ビッグマンを外に連れ出して勝負できるエリック選手と、特にこの3選手が上手く嚙み合っていた序盤こそが最もチームが機能していた時期だったと思います。それだけに、彼の移籍のニュースはある一時代の終焉を感じさせました。

 B1でも引き続きその支配力を存分に発揮して欲しいのですが、いつか福島に戻ってきて欲しいところでもあります。

 

 

#21 菅野 翔太 選手( SF:190cm 88kg )

 

 彼が3Pを決めると会場のボルテージも一気に高まるのですが、個人的にはそれ以外の部分でも一切手を抜かない真摯なプレイ・スタイルと、コート内外での利他的なキャプテンシーに注目していました。

 ここ最近はB2でも群馬のトレイ・ジョーンズ選手に代表されるような身体能力の高い外国人選手をSFに起用したり、スウィングマンとしてプレイさせる機会が増えてきている中、たとえ運動能力や体格に勝る選手に対しても相手のスクリーンに臆さずとことん追い掛け回す泥臭いディフェンスに胸が熱くなりました。

 オフェンスが停滞した時もフリーになるためにコートを縦横に駆け回って打開しようという姿勢と、最後まで落ちない運動量も武器なので、新シーズンはかつてのレジー・ミラー選手のように味方のスクリーンを2~3枚もらってからのキャッチ&シュートのようなシーンも見てみたいなと思ってます。

 

 

#23 マーク・セントフォート 選手( SF/PF:200cm 95kg )

 

 3Pラインの外からボールを自分で運び、そのままドライブでインサイドにアタックするプレイは相手チームにとってはほぼアンストッパブルレブロン・ジェームズ選手の06-07のプレイオフ、対ピストンズの第5戦の後半からOTを彷彿とさせる力強さを感じました。

 一方、3Pラインの外でボールをもらってパスの出しどころを探す際にボールを止めてしまい、オフェンス停滞の一因になっていたことが残念です。走りながらボールをもらうのか、それともトリプル・スレットからオフェンスを開始するのかでプレイの幅が左右される点がそのまま好不調の波に繋がっていたのでは。

 後述するフェイゾン選手同様、途中加入の外国人選手の高い個人技のスキルをチーム・オフェンスの中に上手く組み込めず、単発的な武器にしかできなかったチームの状態も彼の活躍の波と関係があると思います。

 

 

#24 鈴木 大 選手( PG/SG:183cm 80kg)

 

 先発出場orベンチ・スタートに加え、選手の健康状態によって1stガードor2ndガードと、求められる役割が毎ゲームに近いペースで変わらざる得ないチーム事情に最後まで対応された選手です。

 こういった背景から、シーズンを通してコート上の存在感にどうしてもムラが見られたものの、時々別人のようにオフェンス時に積極性を発揮されることもありました。多分、これこそが彼の本来の姿なので、新シーズンの奈良バンビシャス戦は‟要注意人物”としてそのプレイをしっかりと追っていこうと思います。

 

 

#32 武藤 修平 選手( PF:192cm 95kg )

 

 局所的な起用にもかかわらずスタッツに残らない活躍でチームを支え続けた選手です。昨シーズンはコロナによる外国人選手合流の遅れやシーズン途中での選手交代と、その時々でチーム唯一のビッグマンに求められる役割が変わっていった相当に難しいシーズンだったと思われます。

 「もっと出場時間があれば、どんな活躍をする選手なんだろう?」という個人的な興味に対する答えが、おそらく出場時間が大幅に増えるであろう鹿児島レブナンズで大きな前進と共に明らかになることを切に期待しています。

 

 

#33 喜久山 貴一 選手( PG:175cm 75kg )

 

 シューティング練習の際、真っ先にボールラックまで走っていく…...そんなゲームの前後にまで表れる熱い姿勢が大好きでした。思えば最初に観戦した19-20シーズンの愛媛戦のハーフ・タイムに、大差をつけられてなお全力でアップする姿を見た時からの一目惚れだったのかもしれません。

 シーズン序盤、自分のリズムから臆することなくロング・スリーを放ちスウィッシュで決めていた姿がもっと見たかったのですが、ゲーム・コントロールが最優先となったシーズン中盤以降、3Pのアテンプト自体も減ったことが残念です。青森ワッツではシューター寄りの起用で持ち味を発揮されることを楽しみにしています。

 最終戦‟幻のブザービーター、痺れました。会場で見ていて、ラスト・パスが放たれた瞬間の残り時間からタイムアウトになることは瞬時に判断できたのですが、それでもコーナー・スリーを堂々と決めきる姿が、2012-13のNBAファイナル第6戦のレイ・アレン選手と重なりました。声が出せないながらにゼスチャーでカウントを猛アピールしていたブースターの一人が僕です。あのシュートでシーズンを終えたこと、しかもきっちりと決めきって締めくくれたことは、チームやブースターに新シーズンにつながるプレイでもあったと思っています。

 

 

#40 ジョーダン・フェイゾン 選手( PF:201cm 107kg )

 

 ボンズに加入する際の「チームのために全力を尽くす」という自らの言葉を最後までプレイで貫いた漢。(個人的)シーズン後半のMVP&チームの救世主。故障者やケガ、好不調の波に苦しむ選手が多かった昨シーズンにあって、一番安定感のあった選手だったと思います。

 加入後すぐに、チームの立て直しに得点以外の部分からもしっかりかかわっていこうとする姿が印象的でした。時々彼がボール運びに加わることでチームの課題が解消されたばかりでなく、必要とあれば3Pを狙い、手薄な時はインサイドの肉弾戦も辞さない……ほぼ全てのポジションを補っていたと思います。

 また、相手チームの戦術によってオフェンスの選択肢が彼の個人技に限定されてしまうような孤軍奮闘の状況にあっても、最後まで集中を切らさず、フラストレーションを表情にあまり出さない姿勢も見事でした。

 ブースター感謝祭のじゃんけん大会の賞として、選手1名のサイン入りポスターをいただける際、誰にするかは本当に悩みましたが、以上の理由から最終的に僕は彼のサインを希望しました。

 ‟来期、絶対に残って欲しい選手”の契約満了のニュースから立ち直るのには、家人共々かなりの時間を要しました。

 

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我が家の家宝です!