大澤 秋津 official blog

或る市民ランナーの内省録

どうしても周囲の受験生が気になる人のために

郡山校宇都宮校の生徒の皆様、こんにちは!

英語科大澤 秋津です。

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NY州郊外の奇祭より(お祭りというよりカオスの祭典)

 かつてこんな受験生がいました。彼は慣れない都内の移動の果てに寿司詰めのバスに揺られ、風が吹き荒れるキャンパスを突き進み、とある大学の受験に臨みました。

 最大のネックは対策不足の英作文。そもそも英語自体にすら自信がないとなると、もう周囲の受験生全員が頭が良さそうに見えて仕方がありません足組んで英字新聞読んでる奴までいるし

 そんな周囲の受験生の中でもとりわけ彼の意識を引いたのは、斜め後ろの席の知的な雰囲気をさりげなく全身に纏った黒髪ロングの女子(※美人)。彼女の落とした消しゴムを拾い手渡した際に視線が合い、その瞬間、「俺は、この受験生にはかなわない」と勝手に思い込んだ彼の戦績は......御想像の通りでございます。

 

 そう、聡明なる皆様はかなり早い段階でお気づきの通り、上記は小生の実話(※黒歴史、とも言う)でございます。……まぁ、今振り返っても、当時の学力では厳しかったのは事実。でも、悔やまれるのは戦う前に負けていたこと。そして、自分から勝手に負けていたこと

 ただ、この時の強烈な体験と反省がその後意外な場所で活かされる機会が巡ってくることになります。

 

 生まれて初めてのマラソン大会(10km)。市民ランナーとしてのデビュー戦ですが準備期間はわずか一か月余り。予想ゴールタイム50分のラインに並んだのですが(※それまでの自己ベストは52分)、スタートまでの間、とにかく周りにいる他のランナーが気になって仕方ありませんでした。

 カラフルなウェア、オサレなサングラス、高性能なスマートウォッチに最新のシューズで完全武装した歴戦の猛者たち。一方、僕といえば上下ユ〇ク〇のスポーツウェアにア〇ィ〇スのジョギングシューズ(※レース用ではない)。「もう少し後ろのラインに並び直した方がいいかも」「みんな俺よりも早いんだろうな」「もう少ししっかり準備してからエントリーすべきだったんじゃないのか」と弱気の虫が混成3部で大合唱

 その時、忘却の彼方にあった前述の出来事がふと蘇り、「スタート前から自分で負けモードに入ってどうする!」と自分を奮い立たせました。

 そして、スタートして1kmもしないうちに......周囲にいたはずの‟意識高い系ランナー集団”は、はるか後方に。正直、腹が立ちました。「その程度の走力でそんなカッコすんじゃねぇ。シューズやギアに失礼だろう!」と引き返して一人ずつぶん殴りたい気持ちもありましたが、それ以上に「俺は今まで一体何と戦ってたんだ?誰と戦うつもりになってたんだ?」という自分に対する怒りが大きかったです。

 それ以降は何も気になりませんでした。ゴール後に家人から聞いた話では途中けっこう雨足が強くなったそうですが、気づきませんでした。後方のランナーも、先行するランナーも、すぐ側を抜いていくランナーも、そんなこと意識している余裕は全くありませんでした。普段以上のペースで走り、かなり早い段階で限界を超えていたので、少しでも気を抜くと「今日はゴールはできないんじゃないか?棄権もあるのでは?」というサラウンドで響いてくる声に屈しそうになりながら、最後まで走ることだけに集中しました。結果は自己ベスト更新の48分。翌年、同じコースを走ってタイムを計ったのですが、走力が上がったにもかかわらずほぼ同じタイムでした。多分、あの時の極限状態によって引き出されていた力は、僕が感じていたよりも大きかったと思います。

 

 この経験から学んだことは非常にシンプルなものです。僕は間違いなく、本番前になると周囲の人間がとにかく気になって仕方がないタイプの人間です。そして、そういった人種に「気にするな」と言ったところで全くの無意味です。「気にしない」と心がけるから、むしろ気になるくらいです。

 なので、以降は「気にしないこと」を諦めました。英検の受験前や大会でスタート地点に集合した際は、むしろ積極的に他の方々を観察しています。「みんな同じようにがんばってきた者同士が、こうやって一堂に会する機会もなかなかないよな」という敬意と共に、「ただ、今日はお前らを倒しに来た訳じゃない。今日、俺は、これまでの俺を超えるためにここに来た」と一言、心の中で確認してから臨んでいます。